2011年12月4日 伊豆東部火山群 矢筈山 登山



GPSの登山軌跡。
大室山から見た矢筈山
矢筈とは矢を弓にひっかけるV字の凹みのことを言う。
矢筈山は伊雄山と同じ火山列で2700年前に噴火した。ただし伊雄山とは違い、粘度の高い溶岩を噴出させて谷を埋めるように溶岩ドームを形成した。
隣の孔ノ山(660m)も溶岩ドームで同時期に噴火した。
溶岩ドームは冷えると収縮して岩が砕け、クレバス状の裂け目を成す。落ちたらタダでは済まない。

遭難で死者も出ている矢筈山。
GPSに1/25000地図等、万全の装備で向かった。
今回は姪を連れていたので少し不安だったが無事帰還できた。



矢筈山へは県道111号遠笠山道路の鹿路庭峠T字路から登山道に入る。
はじめは県道に沿ってヤセ尾根を歩く。
県道から離れると、写真のような崩落箇所が数箇所現れる。
谷底まで急斜面であり、落ちたら生還は無理だと思われる。



崩落地を慎重に越えると、杉の倒木地帯に入る。
それを過ぎると平坦な窪地の湧水地に出る。陽光が美しい。
小川の中に飛び石がありそれを渡っていけば先に道が続いているのだが、前日の雨で増水していて渡れない。
小川を右に巻いてやりすごした。




孔ノ山の麓に沿って少し進むと大きめの窪地に出る。
ここは不思議な森だ。
下草の無いまっ平らな森。声を発すると狭い谷に響き渡る。
2700年前まではこの一体は緩やかな谷だったが、孔ノ山・矢筈山が溶岩ドームを成長させて谷を塞いだ。
孔ノ山・矢筈山の裏側のここだけ谷が取り残され現在の地形になったと思われる。
自然の神秘。



孔ノ山は裂けた巨石が多く、溶岩ドームらしい山だ。




炭焼窯の跡がいくつかあった。



孔ノ山の麓をぐるっと歩くと、右から矢筈山が迫ってくる。
鞍部に到着すると、山頂への案内板が現れる。これを見落とすと池地区まで道無き道を下ることになるらしい。
ようやく矢筈山に取りつくことができる。



矢筈山も溶岩ドームらしい山だ。
巨石が砕け荒々しい山肌だ。
先人の付けたリボンを慎重に探しながら進む。リボンが無ければ間違いなく遭難していた。



急斜面を登っていくと再び炭焼窯の跡があり、ここからは富士山がきれいに見えた。
右側に大室山があるが、樹木に邪魔されてよく見えなかった。



さらに急斜面を登り詰めると、矢筈の名のとおり凹地に出る。
ここを左へ進めば山頂は近い。
ここにも炭焼窯の跡があり、きれいな円形を留めている。周辺には一升瓶が転がっていたり、生活の臭いも残っている。
それにしてもよくこんな所まで炭焼きに来たなぁ・・・




山頂付近は巨岩が多く、岩と岩の間は大穴が開いている。
落ち葉で大穴が見えなくなっている場所もあり、リボンも見つけにくく慎重に進む。



屏風のような巨岩の裏には不思議な穴が開いていた。
岩が円形に凹んでおり小火口を連想させる。人工的には見えない。



山頂下には温風を吹き出す穴があった。
下調べで存在を知っていたが、案内板も無く手をかざしてみてようやく見つけた。
火山活動が終わってもなおこれだけの地熱があるなんて凄いパワーだ。
伊豆が温泉だらけなのがよく理解できた^^;



山頂に到着。
途中で初老男性に会っただけの静かな山。眺望は無いが鳥のさえずりが美しい。



山頂からは海側は見えない。裏手に遠笠山が見える。
遠笠山は伊豆東部火山群最古の火山で単成火山スコリア丘だ。14万年前に噴火した模様。



山頂から潅木を掻き分けて少し奥へ入ると、相模湾や大室山が見える。
それにしても大室山の溶岩流(大室山から右方向)は凄いなぁ・・・



山頂に戻って昼食を食べる。
13時頃、下山開始。迷わないようゆっくり鹿路庭峠へ戻った。


参考までにコースタイムを記しておく。小学四年生を連れてのタイム。スローペースだと思われる^^;
鹿路庭峠10:23-湧水地10:53-平坦な森10:58-孔ノ山矢筈山鞍部11:12-富士山ビューポイント11:39-矢筈山鞍部11:54-矢筈山山頂12:20 往路1時間57分
矢筈山山頂13:00-矢筈山鞍部13:19-富士山ビューポイント13:36-孔ノ山矢筈山鞍部13:54-平坦な森14:09-湧水地14:14-鹿路庭峠14:39 復路1時間39分



戻る